ここは架空の書房です
きょこさま *ものがたりの 登場人物の 絵を描いてくださいました *読んでくださる方へ* 六月雨音<むつきあまね> と申します。 玻璃の音*書房 という 架空の書房を 中心にした ものがたりを書いてます。 ものがたりから 思い出した本たち。 反対に、本棚を眺めていて 書きたくなった話。 そんなつたないものたちを 散りばめました。 * 玻璃(はり)とは ガラスのこと * 七宝の一つ*水晶 *非結晶質の物質 *きらきらのもの* → 四季編 では ものがたりを順に読める よう並べ替えてあります。 春のものがたりから コメント欄を開けました。 承認制になっていますが よかったら、感想など お寄せいただけると 嬉しいです。 「冬のものがたり」 から 「夏のものがたり」 に 向かって。 ものがたりと書評を ミックスさせたものを 書いています この書房にやってきた本は まだ迷子のよう。 時々 名前を 呼んで あげないとね ↑ 挿絵をお借りしています *リンク集 spare timeを楽しい時間に * カテゴリ
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林檎パーティが 終わって、たくさんの 林檎菓子を 抱え ぼくは、雪を踏みしめながら ここに 帰り着いた あたたかい処から 冷え切った 自分の家に テーブルの上に それらを置く時、冷たい音が ただ無言で響く コトリ、たとえ ささやかな小鳥が 足音を立てても 家中に 雷鳴のように 知らせ渡るだろう しばらくの間、広々とした居間で、ストーブの火を 眺めていた 今、ぼくは 一人きりで 暮らしている ぼくの両親は、いない 一年前の 冬のある日、突然 消えたのだ いま、どこにいるのか、生きているのかさえ、わからない 時々 やってくる 贈り物は、両親からだろうか そうであるなら、せめて一言くらい 手紙を 残してくれたら クウヘンさんは、一緒に あちこち 捜してくれた 警察に 届けたり、心当たりに 訊ねてくれたり、奔走してくれた * あの冬の日、夜の列車の中で、ぼくは ぼんやり 窓を見ていた 探し疲れて、心のどこかで あきらめが 芽生えていた 風がすごい日で、窓硝子に 雪が カチカチっと 当たっては 流れてゆくさまを見て 少しずつ 一人になったことを 実感していた こんなに 心が冷えていくのを 感じたのは、はじめてだった 指で 曇った窓に 一本の線を 引いてみると 濡れた指先は 即座に凍り、確かに 引いたはずの線は すぐに なかったように 消えていった 窓の外の 凍った 暗い世界は どこまでも ぼくを 拒絶しているかのようだった * 柚子さんは 一人で暮らすのを 心配してくれたけど クウヘンさんは、男の子だから大丈夫と 言ってくれた そんな クウヘンさんの 心づかいは、有り難かった ぼくには、一人の時間が 必要だったから 今、玻璃の音*書房 で、ほとんどの時間 一緒に 暮らしているようなものだけど 帰ってくる場所、 一人で寝る場所、 ものがたりを書く場所 そんな家は、やはり、 ぼくが ぼくである拠 ぼくは 家では、薪割りをしなくなった 一人で 薪ストーブを 使うのは より孤独を 際だたせるようで つらかったから 両親がいなくなった理由を ぼくは、クウヘンさんは 知っているような 気がして いつか 話してくれるような 気がして 時々、すがりつきたくなるのを、こらえている そんな時、 庭先で ことりと 音がした
by coton_coton
| 2016-01-29 00:00
| 真冬の林檎たち
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