ここは架空の書房です
きょこさま *ものがたりの 登場人物の 絵を描いてくださいました *読んでくださる方へ* 六月雨音<むつきあまね> と申します。 玻璃の音*書房 という 架空の書房を 中心にした ものがたりを書いてます。 ものがたりから 思い出した本たち。 反対に、本棚を眺めていて 書きたくなった話。 そんなつたないものたちを 散りばめました。 * 玻璃(はり)とは ガラスのこと * 七宝の一つ*水晶 *非結晶質の物質 *きらきらのもの* → 四季編 では ものがたりを順に読める よう並べ替えてあります。 春のものがたりから コメント欄を開けました。 承認制になっていますが よかったら、感想など お寄せいただけると 嬉しいです。 「冬のものがたり」 から 「夏のものがたり」 に 向かって。 ものがたりと書評を ミックスさせたものを 書いています この書房にやってきた本は まだ迷子のよう。 時々 名前を 呼んで あげないとね ↑ 挿絵をお借りしています *リンク集 spare timeを楽しい時間に * カテゴリ
記事ランキング
画像一覧
ライフログ
最新の記事
検索
ブログジャンル
*
その他のジャンル
|
粉雪さんに 対する きもちは ぼくの中で、どうにも わからなくなっていった 自分が 真っ二つに 分裂していくような そんな 気がしていた ぼくは、卑怯な男 なんだろうな 少年であろうと、青年であろうと、何を求め、何に従う 胸が どきどきした 幼い心を持つ 自分とは 裏腹に 粉雪さんを 抱きしめている 自分を 傍観者のように 観察している ぼくが、そこにいる 何度も 唇を重ねているうちに 少しずつ、大胆になっていく 自分を 見つける まるで 一つ 一つ 実験しているような 具合に * 君は まるで ちっぽけな 子猫 耳に くちびるを あてると 思惑通りに ぴくりと動く 彼女の肩が 不思議で 何度も 悪戯に 繰り返してみたくなる 君は まるで 天使 こうして、睫毛と 睫毛を 合わせてみたら まばたきを するたびに 鳥が 羽を たたもうとしているように 震える * 粉雪さんの 実体のない 妖精のような つめたい手を つないでいても 空気を 握っているようで つかみどころのない 彼女への心が これ以上進んでいけない もしかしたら ぼくが どこか きもちを 抑えてしまうのは お話の中の彼女が、本気で 愛した途端に、消えてしまう そんな風に 思うからかも しれない 少年のぼくは、次第に 彼女に 心を傾かせている いとしいと、思っている 彼女が 消えるのが いやなんだ はじめて 雪の結晶 を 見せてくれた あの時に 帰りたい 失いたくない 気持ちだけが、焦りに変わる、そんな毎日 誰かの かすかな声が 歌声のように 聴こえてくるんだ その ぼくを呼ぶ声は 忘れられない あの人のものだ ぼくは 意味もわからずに いつしか 一人で 泣きじゃくっていた あの人の 手招きの感触と 記憶の底の不安と 戦いながら まるで 何かに 引っ張られるように ぼくは、 少しずつ 心を 閉ざしていく #
by coton_coton
| 2016-07-23 21:31
| 淡雪のような
空から 降ってくる 雪の結晶は 剣先を 下に向けて落ちてくる 尖った氷だ ふうわりとやってきて、綿菓子の 仲間の顔をしているのに 袖に落ちた その雪はもう 冷たい表情をしている 地に堕ちて 集まって 何か相談して 固まる 雪の前の 水滴だった 過去を なつかしく 語り合っている 水色で透明な その滴たちは、空から 地球を 覗き見ていた 同志 雪の結晶の形は 六角形 水の欠片が ロッコ きっと 六この 水滴は、 ぎゅっと 手をつないで くるくる回りながら、正確な 六角形を作ろうと バランスをとる 不思議な 六花の結晶が 向かう先は ぼくたちの地球 空からの 蒼い伝言を 運んでくる使者 粉雪さんが 新しく創り上げる 空ではなく 地上での 雪の結晶は 万華鏡の中の 模様のように、ビーズの欠片のように 粉雪さんの手から こぼれ落ち、そっと 輝いている 浮遊の雪花 * ぼくと 粉雪さんは、ほとんどの時を 共に過ごした 朝 迎えに行き、学校へ通い 放課後は 街を 散歩して、噴水公園の 池の横に 佇み いつも いつも 手をつないで 一緒にいた だから あっというまに 街中の噂に なった 柚子さんの 耳にも 入っているだろう ぼくは、ここのところ 玻璃の音*書房 に 寄ることは なかった 食事は、残った 林檎 を ずっと 囓っていた * 粉雪さんを 家に 送り届ける前には いつも 氷った湖に行って、二人きりで スケートをした ぼくも スケーティングが 上手くなっていた 粉雪さんの手は、いつも つめたくて 可哀想なくらい ぼくは 何度も あたためようと したんだよ 冬のつめたい風を 受けながら お互いの目を 見つめ合い 気紛れに止まって、彼女を 抱き止めて 頬を 両手で 包み込んだ 湖に映る 薄明かりの中 ぼくから 顔を近付けて キスをした キスは、だんだん 長く 深く なっていった ぼくは、粉雪さんに 魂を 奪い取られてゆくような 感覚で そんな 甘く 誘惑的な気分に、すべてを 委ねていた 氷った 湖の底には、美しい 氷の女神 が 住んでいて こんなことをしている ぼくらを きっと いつか 引き擦り込む 粉雪さんが、それを 待っているのか それとも、ぼくが、その時を 待っているのか このまま 溺れて、行き着くところまで 行ってしまおうか そんな 熱くなっていく 想いとは 別に ぼくは、いまだに 粉雪さんが この手の中にいる 実感がなかった 何度 キスをしても 君の熱を感じられずに、ただ 過ぎ行く 冬の日 氷の女神 が ぼくの心を 容赦なく 吸い取ってゆく ただ 冷たくなって 堕ちていく心 はらはらと 儚げに 消えてゆく 雪 月の夜は、そっと 待ち合わせて かすかな 灯りの中に、舞い散る 淡い雪を 見つめていた * 今日の1冊 「スノードーム」 アレックス・シアラー 著 シアラーは、1949年生まれ イギリス・サマセット州在住の作家 若い科学者は 「光の減速器」研究中のある日、失踪する 彼は 不思議な物語を 同僚に残す 果たして それは ただの空想だろうか 愛とはなんだろう スノードームの世界に 想いを巡らせる #
by coton_coton
| 2016-07-19 22:12
| 淡雪のような
粉雪さんと ぼくは、いわゆる 幼なじみなのだが 彼女は体が弱くて、めったに 外に出てこない 女の子だったので 小さい時に 話した 記憶がない 少しずつ 外に出られるようになって 丈夫になるために バレエを はじめるようになってから 頬の色も だんだん 小さな林檎のように 紅くなってきて ともだちとも 遊べるようになった でも、いつも 女の子と 一緒だったので あまり 話したこともなく 過ごしていた ある日、お休みの 彼女の許に 学校からの手紙を 届けに行った ぼくの家と 彼女の家は 玻璃の音*書房 を はさんで 隣同士だったから フウチくんに、見せたいものがあるの その日、ぼくは はじめて 彼女の部屋に あがった そして、奥の零下の部屋で はじめて 雪の結晶 を 見せてもらった きれいだった それから、ぼくらは たくさん 話をするようになった でも、それは なんとなく 二人の秘密で 学校の中では、あいかわらず ぼくらは 話すことはなかった 両親が いなくなってから ぼくは 前より 頻繁に、雪の結晶 を 見に行った 粉雪さんの前で 泣きそうになっても いつも涙は、落ちる前に 氷になってしまって、どこかへ 消えていった 氷の部屋から 出てくると 砂糖さんが お菓子を 用意してくれていた まるで 氷らせたような あの 落雁のような ガチガチのお菓子を あたたかい紅茶で、溶かしながら 少しずつ 囓る 砂糖さんは 粉雪さんを 愛していると 感じた ぼくには わかったんだ あの堅いお菓子たちに 秘められた あたたかい感情 だから、粉雪さんが 愛されていないだなんて そんな風に 不安がっていたことを 知らなかった 粉雪さんは、まるで お話の中の お姫さまのように ふわふわと 実体がなくて あらゆる感情と 離れたところにいるような そんな ぼくの 勝手なきもち いつか 消えてしまいそうだと、その頃から 思っていた * 今日の1冊 「若菜集」 島崎藤村 著 まだあげ初めし 前髪の 林檎のもとに 見えしとき 前に さしたる 花櫛の 花ある君と 思ひけり この韻を踏む 美しい詩は 有名な 「初恋」 の一節 #
by coton_coton
| 2016-07-18 00:00
| 淡雪のような
あくる日、ぼくは 柚子さんに みつからないように そおっと 学校へ 行こうとした 顔を見られたら、昨日キスしたことに 気づかれそうで そんな朝に限って 柚子さんは、道ばたにいて ね、今日は 早く帰ってくるよねって、 ぼくに問いかけた ついでに、コリスがやってきて ポンポンと 肩を叩いて ニッと笑った そして、ぼくに どんぐりを1個 手渡した 笠をとった ぼくは あわてて その場に ひっくり返りそうだった そこには、まるい ハートの形の 苺のクリーム コリスは 満足そうに にっこり笑って そのどんぐりを 持って 行ってしまった あ、粉雪さんも 誘って 帰ってきてね 柚子さんの ぼくを追いかける声に 心臓が どきんと 鳴った * やっぱり、みんな知ってるのかな でも、どうしてかな ぼくは 一日中、昨夜のことで 胸がいっぱいで なにを どうしていたのか 覚えてない 気を抜くと、うっかり 自分の唇にさわって あの時に戻ってしまいそうで、そのたびに 頭を振った 放課後、隣のクラスから 粉雪さんが やってきて 一緒に帰りましょう と言ったから クラス中の生徒たちが、目をまるくしていた にっこり笑った 粉雪さんの くちびるにばかり 目がいってしまう ぼくは、どうすればいい * 学校から 家路に着くまで ぼくたちは 歩調を合わせて ゆっくり歩いた どこを向いていいか わからなくて やけに 真っすぐばかり 見ていて 顔が見られなかった 粉雪さんは ぼくより 小さかったから 話す時 ぼくは 少し 視線を下げて 小首を傾げて のぞきこむようにして、やっと 君の顔を見た 今日の 学校での話や、北の国の話を 続けて 決して 昨日のキスについて 話が及ばないように 昨日の意味を聞く そんな勇気は ぼくには なかった いつもと 変わらぬように見えた 粉雪さん * ぼくは、柚子さんと 顔を合わせたくなかったのだけど 粉雪さんは 柚子さんに 誘われたらしく 当然のように 玻璃の音*書房 へ 向かった クウヘンさんの姿を 見かけないと思ったら 何ヶ月ぶりかの はりきりすぎた薪割りで 腰を痛めて、寝こんでいた まるで 昨日のパーティと 同じように 女性陣は なにか おいしそうなものを 作っているようだった ぼくは、庭に出て、空を見上げて なんとか ほてった顔を冷やそうと 雪を 受けていた * 今日は クウヘンさんの誕生日 だったことに 気づいたのは、夜になってからだった やっとのことで、部屋から 降りてきた クウヘンさんを お祝いのごちそうと バースデーケーキが 迎えた 大きなロウソク2本と、小さな7本 あ、コリスが持ってた ハートのどんぐりは プレゼント ぼくは、朝からの誤解を思い出し、さらに 頬が赤くなるのを 感じた そして、プレゼントを 忘れてしまったことにも * 今日の1冊 「空の名前」 高橋健司 著 空には名前がある 雲にも、 雨にも、 風にも 日本人でいることが、しあわせになる1冊 写真と共に、もう一度 四季を抱きしめたくなる 糸遊、 襟巻雲、 貝寄風、 東雲、 片々雪花、 これわかる? #
by coton_coton
| 2016-01-31 00:00
| 淡雪のような
窓の方を見ると、粉雪さんが コトコトと 窓硝子を 叩いていた ぼくは びっくりして 窓を開けた 粉雪さんは、舞い散る雪と共に 入ってきて すぐに戻らないと、 と ささやいた 玻璃の音*書房 に 忘れ物をしたと いってきたの とにかく 中に入ってと 手をさしのべて ぼくは あたたかい ストーブの前を すすめた 粉雪さんの手は 氷のようだった 手袋を忘れたの、そういうことにしたの そう言って、ポケットから 白い手袋を 出して そこにおいた 私、ママに 嫌われているんだと 思っていたの ママは 私と視線を 合わせるのを 避けているような ところがあって 昔は ママも よく笑っていたのに パパが 出て行ってしまってから あんなに、カチカチの お菓子を 作るようになって 私が パパに 似ているせいだと 思うの 私を見ると 思い出してしまうのよ だから ママは 私を愛せない、許せない存在なんだわって パパは 昔の恋人のところへ 行ってしまっていたの 遠い 北の国、雪や氷で 蔽われた かの国 彼女が 治らない病気と知って、行ってしまった ママは 彼女が 何年も前に 亡くなったことを 知っていたけど パパが 帰って来ないことも 知っていた すこし前に、パパから 手紙が来て ママは 私のことを やっと 見つめてくれた 何年かぶりに だから、私も 一緒に行くことに したの 雪の結晶も 熔けない 国へ 涙ぐんで、あわてて 話す 粉雪さんに、ぼくは 言った 家族で 暮らせるなら、その方が ずっといい と 粉雪さんの しあわせな笑顔が ご両親には 必要なんだよ と 春になって 出発するまで できるだけ そばにいてほしいの うす桃色の頬に ふれてみた 粉雪さんは、そっと ぼくに くちづけた 甘い 林檎の味の キスだった * 今日の1冊 「金曜日の砂糖ちゃん」 酒井駒子 著 だいすきな駒子さんの ちいさな絵本 2話目の 「草のオルガン」 は こんなきもちになる ぼくが 野原に隠した 宝の箱は どこにあるのだろう 年月で風化した そんな箱を ぼくは未来に きっと発見する なんてね、こどもは みんな 無邪気で明るいなんて、幻想 #
by coton_coton
| 2016-01-30 00:00
| 真冬の林檎たち
|
ファン申請 |
||